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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)454号 判決 1959年6月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨第一点について。

労働組合法二七条一一項は、不当労働行為の救済申立を棄却する地方労働委員会の命令に対する労働者側の不服方法について、中央労働委員会への再審査の申立と訴の提起とを選択的に認めたものでなく、労働者側が右棄却命令に対し訴を提起するについては、行政事件訴訟特例法二条に従い、まず中央労働委員会への再審査の手続を経由すべきであること、従つて、再審査の申立期間内にその申立をしない場合には、同条但書の適用がある場合を除き、もはや右命令に対し訴を提起することが許されなくなることは、原審の判断するとおりである。所論は、労働組合法二七条六項をもつて、中央労働委員会への再審査の申立と訴の提起とを選択的に認める意味において訴願前置主義の例外をなす規定と解すべき以上、同条一一項についても同様に解すべき旨云為するが、同規定が労働者側の不服につき右二つの方法のいずれかを選択的に採り得ることとしなかつたのは、不当労働行為救済制度における使用者側と労働者側との地位の差異にかんがみ、労働者側の不服については行政救済に関する一般原則によらしめるのを相当とするにあるものと解すべきであつて、所論のいうように解さなければならないとする理由はない。

論旨第二、三点について。

中央労働委員会が労働組合法二六条に基き規則を制定するに当つて、同法の規定の趣旨に反する定めをなし得ないことは所論のとおりであるが、同法二七条二項は、初審の救済申立に関するものであつて、再審査の申立に関するものでないことは明らかであるから、右委員会規則五一条三項が再審査の申立につき一年より短い期間を定めたからといつて、これがため右規則が無効となるものでないことはいうまでもない。もつとも、規則による再審査の申立期間を定めるに当つて、その申立を事実上不可能ならしめる程度にその期間を短縮することは、許されないものと解すべきであるが、使用者側の再審査の申立期間が一五日と定められている(同法二七条五項)こととの比較からいつても、労働者側についても、この程度に再審査の申立期間を限定することは、法の趣旨に反するものとは解されない。所論は、いずれも右中央労働委員会規則が法の趣旨に反し無効であることを前提とするものであつて、採用の限りでない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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